人気ブログランキング | 話題のタグを見る

日本再生


by japan2600
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

高山正之氏 「ポインセチア」

週刊新潮に「変見自在」連載中の高山正之氏は
新聞記者を経て大学で教鞭を執る一方で執筆を続けておられる。
氏の見解はいつも面白く、時に難しく
小さな段ボール中に、具体的史実と、皮肉と思いを
分類分けもしっかりした上で、整理整頓し、詰め込んでいるかに見える。
その圧倒的情報量に加え、「へ〜」と思わせるトリビア的気付き、
そしてしっかりと筋道立てられた
「文章力」も、魅力のひとつかもしれない。

ここで氏の秀逸な1ページをご紹介する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

週刊新潮 「変見自在」高山正之 08.4.10

「ポインセチア」

共和党と民主党を並べると日本ではなぜか民主党の人気が高い。
しかし朝日新聞に頼らずに自分の目で見ると結構ひどい大統領が多い。

例えばF・ルーズベルトは阿片商人の息子という出自のせいか、
彼の外交は狡猾さだけが目に付く。
残忍さも桁外れで、市民を標的にしたドレスデン爆撃や
東京大空襲も彼の発案によるものだ。
ちなみに東京大空襲はカーチス・ルメイが現場指揮を取り、
周辺から囲い込むように焼夷弾を落とし、
10万市民を真ん中に集めて焼き殺していった。
こんな残忍な男に日本は勲一等旭日大綬章綬を贈って栄誉を称えている。

そしてトルーマンは原爆を初めて人類の上に落とした。
日本に使ったのは白人優位の証明になると信じてのことだ。
ベトナム戦争を無責任に始めたケネディは下半身も無責任だった。
彼に倣ったクリントンはホワイトハウスで実習生を犯したうえに、
やっていませんと嘘までついた。

民主党にこんな大統領が多いのは
初代のアンドリュー・ジャクソンのせいだという説がある。
「all correct」を無学ゆえに「AC」でなく「OK」と略したのは
知られるが、民族浄化の張本人ということは知られていない。
彼はミシシッピーの東を白人の土地にするからそこにいるインディアンに
出て行けと命じた。
ジョージア州から追われた1万7000人のチェロキー族は
4000人しか目的地に着かなかった。

「涙の旅路」と呼ばれるこの民族浄化作戦を実際に指揮したのが
ジョエル・ポインセットだった。
彼はサウスカロライナの出身だが、英国の士官学校に入り、
しばらくチリに駐屯した。
その後はロシアのツァーのもとに遊びに行ったり、
中東にも足を伸ばしてカジャール朝の王とも付き合ったりしている。
ここでは自然に湧出する石油の海を見て将来はきっとここに手を入れようと考えた。
このアイデアは後にCIAによるイランのモサデク暗殺として形になる。
帰国した彼は、その冒険心とチリ時代に培ったスペイン語の能力を買われて
特命外交官として南米諸国に派遣される。

アルゼンチンからチリに行くときはあのアンデスを徒歩で越えた。
帰国後は初代メキシコ大使に任命される。彼はここで艶やかな赤い花を見つける。
彼はその花を米国に持ち帰り、
今は彼の名にちなんだ「ポインセチア」の名で親しまれている。

世界を飛び回って冒険を重ね、花にその名を残す。
何とも華々しい人生だが、それはごく一面だ。

彼は民主党の大統領と同じに「粗野で陰謀好きで狡猾な」性格を持ち合わせていた。
南米歴訪もその性格を見込まれて
「スペインからの独立を企てる国を見つけ、米国の介入機会を作る」
(ガヤルド「米国の工作員ポインセット」)ことだった。
チリでは半分うまくいくが、彼が選んだ男が処刑されて終わってしまう。
メキシコ赴任も同じ。「政府転覆を狙う反政府勢力の育成」(デューク大学「やり手の米国人」)が目的だった。
これも半分うまくいったが、ポインセットが図に乗って
謝礼にメキシコ領テキサスの割譲を要求し、
自分の育てた勢力から追放された。
米国が力ずくでテキサスを奪ったのは彼の追放の5年後になる。

結局、彼が実力を発揮できたのはインディアンの民族浄化だけだったが、
彼の人生は外交の本質を実によく示している。
すなわち外交とは為政者も大使もすべて人非人というか、
魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界の人間になりきる覚悟がいるということだ。

米国人は幸い民族としてその素質を十分過ぎるほど持ち合わせているが、
では日本人はどうか。
福田首相が外交について
「お友達の嫌がることをあなたはしますか。国と国との関係も同じ。」
と言ったと産経新聞の阿比留瑠比記者が紹介していた。
周りの国が嫌がることをするのが外交の要なのを知らない。
この人ができるのは結局、日本人の民族浄化だけかもしれない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「スーチー女史は善人か」
高山正之/著
新潮社 2008年2月出版
高山正之氏 「ポインセチア」_b0129046_1156523.jpg

by japan2600 | 2008-04-17 11:57 | 政治